泌尿器光力学研究会 会長
藤本 清秀
平素より泌尿器光力学研究会の活動にご支援を賜り心より感謝を申し上げます。山口大学教授 松山豪泰前会長から引き継ぎ、2022年1月より本研究会の会長を務めさせていただくことになりました奈良県立医科大学の藤本清秀でございます。
2017年に筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)に対する経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)の術中光力学診断(PDD)に用いる経口薬剤として、アミノレブリン酸塩酸塩(アラグリオ)が世界で初めて本邦において承認され、現在NMIBCの診療において広く実施されるようになりました。一方、アミノレブリン酸や光力学反応に関する基礎研究も数多く行われ、アミノレブリン酸の多彩な生体内での特性や癌細胞における生化学的な代謝機構の異常も明らかされ、光力学治療の発展にも繋がっています。アミノレブリン酸はミトコンドリアにおけるヘム合成に必須の物質で、癌細胞ではヘム合成の中間代謝産物である蛍光物質プロトポルフィリンIX(PpIX)が正常細胞に比べ蓄積しやすく、PpXIが蓄積した腫瘍組織に青色光を照射すると赤色蛍光を発するため、膀胱粘膜の小さな腫瘍や上皮内癌など平坦病変の検出に大きな力を発揮します。TURBTの術後再発率を低下させることが多数の臨床研究で証明されたことにより、2019年の膀胱癌診療ガイドラインではエビデンスならびに推奨度の最も高い技術となっています。最近の報告ではNMIBCでよくみられる反復再発が抑制されることも示されています。また、本研究会が中心になって行ってきた臨床研究(BRIGHT study)では、PDD-TURBTがもたらす効果として、ハイリスクNMIBCに対するPDD-TURBTにより腫瘍残存が減少することをsecond TURの結果から示しました。一方、アミノレブリン酸自身は蛍光物質でないため、光線過敏症などの重大な副作用の報告はまれであり、当初の添付文書に記載されておりました光線過敏症を起こす可能性のある薬剤や食品との「併用禁忌」の文言も、厚生労働省への働きかけにより2022年1月に削除され、「併用注意」に改訂されました。さらに、PDDで使用する光学機器も高額なものからお手頃な価格のものも登場しており、性能の向上と相まってPDDを導入しやすい環境も整備されています。
このようにPDDの臨床導入によってNMIBCの診療は大きく変化しつつあり、PDDがより身近で利用しやすいNMIBC診療の技術となってまいりました。是非、多くの皆様に泌尿器光力学研究会にご入会いただき、PDDに関する情報提供の場として本ホームページをご活用いただければ幸いに存じます。